MUSIC CONFERENCE
 
10月7日から8日まで、渋谷ON AIR EASTには 現在の音楽ビジネスが抱える問題が集約された。 業界のキーパーソンが顔を揃えた画期的な2日間。 6つのSessionにおける議論の焦点をピックアップ。

構成/小野良造


オープニングコメント
奥田義行(音制連 理事長)
「マネージメントと音楽ビジネス環境の変化」
後藤 豊(音制連 顧問)



Session 1 TECHNOLOGY IN THE CITY
「プレゼンテーション:最新音楽配信技術」

デジキューブ ヤマハ
ブイシンク 三菱商事
メディア・ラグ リキッドオーディオ・ジャパン
  マイクロソフト

パソコンによるダウンロード配信、インターネット通販、キオスク型配信など、ノンパッケージによる音楽流通が行われようとしている現在、ゲームソフト会社やベンチャー企業など音楽業界外から参入しているメーカーを含め各社が、それぞれの音楽配信システムの特徴を、著作権管理システムやセキュリティも踏まえて説明した。 「キヨスク型」の3社は、通信衛星による配信と光ファイバーによる配信の違いはあるが、すでに何ヶ月か実験店舗を使って利用者の声や数字をチェックしており、来年からの本稼働に向けての具体的な目標店舗数や端末台数を挙げていた。  またこの2日間、各セッション間の休憩時には、各社とも会場に設置された端末やパソコンを使って入場者に熱心に説明する姿が見受けられた。


Session 2 ASIA IN THE CITY
「アジア音楽情勢と今後のビジネス展開について」

キース・カフーン/タワーレコード
柴田英里/ポリスター
田中久勝/オリコン
三須純平/ワーナーミュージック・ジャパン
横澤 優/ロックレコード
ナビゲーター:烏野隆弘/音楽制作者連盟


台湾、香港、中国、韓国の四ヵ国での日本の音楽の現状と展望について、アジアでのビジネス経験者6名が具体的な数字を挙げながら語り、興味の尽きない話が続けられた。  台湾の日本熱が今や本物で、また中国本土を含めた他のアジア地域への情報発信地にもなっていること。中国は、まだカセットが主流で、しかもブートレグが多く、信頼できる音楽出版社が少ないこと。日本音楽の開放が近い韓国は、規制がまだ強いため時間はかかりそうだが、潜在的には受け入れの準備ができているらしいこと、等々。しかしどの地域も流通面の整備に心配があるとも。  現在はヴィジュアル系&ポップ系が主流という日本の音楽が、東南アジアでビジネスになる時期が近づいていることを感じとれた。



Session 3 SHOWBIZ IN THE CITY
「コンサートビジネスとマネージメント」

於保義教/文化科学研究所
川村広明/通産省
桑原宏司/サンデーフォークプロモーション
小島紳次郎/ウエス
三瓶雅浩/キョードー東京
重枝豊英/通産省
鈴置雄三/サウンドクリエーター
中西健夫/ディスクガレージ
八巻保宏/アミューズ
ナビゲーター:糟谷銑司/音楽制作者連盟

「ソールドアウトのコンサートがなぜ赤字になるのか」。この命題に端を発し、コンサートビジネスの在り方を巡って議論は白熱した。パネラーには各地のプロモーターを中心に、通産省からも2名参加し、公共ホールの活用のされ方や助成金の使われ方など話は多岐にわたった。  コンサートが自立したビジネスになっていないのはおかしい、とは大方一致した意見だった。だが、制作費の抑えが効かないとはよく聞く。プロダクション側の意向に沿わなければならないことも多いプロモーター側の不満も垣間見られた。 「リスキーな商売、でもそこにやり甲斐があったし夢も見られた」という部分と、現実的な予算管理の問題の狭間に、現在のコンサートビジネスの難しさが象徴されているように感じた。



Session 4 BUSINESS IN THE CITY
「変貌するレコードビジネス」

稲垣博司/ワーナーミュージック・ジャパン
岩田廣之/ユニバーサルビクター
高垣 健/ビクターエンタテインメント
高橋剛弘/タワーレコード
野上 力/力塾
細川 健/プライエイド・レコーズ
ナビゲーター:中井猛/セップ

タワーレコードによると、売上げの30%がJ−ポップで、さらにその3分の1がインディーズという。インディーズの隆盛の一方で中堅メーカーの不振、またメガヒットとノンヒットの二極分化による中抜け状態はいつまで続くのか、対策はあるのか。ノンパッケージ時代という音楽流通の変化を前にしたレコード会社の在り方を、メジャーとインディーズ双方から意見を出しあった。 「インディーズに学ぶべき点が多い」と言うメジャー側は「枚数によりコストをクラス分けする必要」「ハイリスク・ハイリターンの時代は終った。原点回帰すべき」などの意見。一方「好きで」が出発点と言うインディーズも「今は飽和状態で、ミニメジャー化した現況をどう原点に戻すか」と、両者から“原点”が出てきたのが印象的だった。



Session 5 FUTURE IN THE CITY
「公開討論会:21世紀の著作権・著作隣接権管理業務」

加藤  衛/日本音楽著作権協会
千葉卓男/日本レコード協会
吉田大輔/文化庁
上野  博/音楽制作者連盟
ナビゲーター:半田正夫/青山学院大学

昨年生産された生MDは9,000 万枚で、今年は1億2千万枚まで伸びるという。それだけの枚数が音質が良いまま違法も含めてコピーされていることになる。権利者側から危機感が叫ばれていたが、10月1日に施行された改正著作権法は、デジタル・ネットワーク時代に相応したもので、私的使用の家庭コピーでも「全くの自由」ではなくなった。  このセッションでは、こうしたネット時代の音楽情報の管理システムのポイントを、文化庁、JASRAC、日本レコード協会、音楽制作者連盟がそれぞれ披露した。  またJASRACが独占していた仲介業務の見直しに関しても、「慎重に対応すべきでは」と主張するJASRACに対し、「市場原理を導入する時期に来ている」などの忌憚のない意見が聞けた。



Session 6 DIGITAL IN THE CITY
「デジタルネットワーク時代の音楽ビジネス」

後藤  豊/ユイ音楽工房
鈴木  尚/デジキューブ
本島昌幸/マイクロソフト
前田正明/NTT移動通信網
盛田昌夫、丸山茂雄/ソニー・ミュージックエンタテインメント
上出  卓/音楽制作者連盟
ナビゲーター:三浦文夫/電通

音楽ネット配信が目前の現在、レコード会社として先行するSMEの丸山社長が海外出張先から直接会場に駆け付けるということもあり、最後のトーク・セッションは超満員になり大いに盛り上がった。  SMEをはじめ参加したどの企業も、ビジネスになるかどうかはまだ疑心暗鬼といったところだった。例えば、キヨスク型配信ではインフラの未整備や端末の置き場所など不安材料は多いという。  逆に、若者マーケットを音楽から奪い取った感のあるケータイ/PHSを使った配信を目論むDo Co Moは、遠慮がちながらも自信が窺われた。  パッケージ・ビジネスをノンパッケージに置き換えるのでは意味がなく、全体のパイを大きくすることが必要という意見には納得であろう。決定権はユーザーが握っていると、締めくくられた。